2015年5月8日金曜日

世界最古の庶民学校から現代教育への問い 「閑谷学校」(岡山)

岡山県備前市に庶民教育の先駆けとなった学校がある。JR吉永駅からタクシーに10分ほど乗ると、閑谷学校に着いた。閑谷学校は、①現存する、②庶民を対象にした、③学校建築物、としては世界最古のものと言われている。「なぜこんなところに最初の庶民向け学校が創られたか?」という興味を持ち、見学をさせて頂いた。

厳しい身分制度の中で誕生した庶民学校

誕生の時代背景を考えると、閑谷学校はとても画期的な学校だった。時代は江戸時代までに遡る。当時は身分制度が敷かれており、庶民は育てた米を年貢として支配階級に収めたり、「五人組制度」に基づき反乱や犯罪を起こすと連帯で責任を取ったりする時代だった。


1670年、備前岡山藩主の池田光政は「地方のリーダーを育成する庶民学校を創建する」として、重臣の津田永忠にその建設を命じた。閑谷学校は庶民の基礎学力を底上げし、また論語などの儒学の経典を学ぶことにより礼節を重んじる国民性の形成にも貢献している。その教育成果が注目され、江戸末期には全国の教育者たちが庶民教育を普及させるために、見学に殺到することになる。

閑谷学校で実践された教育とは?

約60名の8歳から15歳までの子どもたちが1年を期限に閑谷学校で学んでいた。中には1年を経過しても居座り、勉学に励み続けた生徒もいたようだ。生徒たちは自宅から、または学校の寮に泊まって通学する。

生徒たちが学んでいた講堂

授業の内容は儒学の教えをベースに読み・書き・算術の3つで構成されていた。1と6がつく日(1日、11日、21日、31日、6日、16日、26日)には儒学の四書、3と8がつく日には五経を学ぶ。そして、2,4,7,9がつく日は読書と習字に取り組み、5と10がつく日は休息にあてられた。

講堂内の様子 
生徒の1日のスケジュールは下記の通り。
 6時     起床 
 7時~10時 自習 
10時~16時 学校 
16時~17時 夕食 
17時~22時 自習と宿題

学び足りない生徒は放課後に教官宅に押しかけ、さらに教えを受けることもあったという。計算してみると、1日14時間は勉強していることになる!^^;
 

学校創設者、池田光政のビジョン  

僕にとって創設者の池田光政のビジョンに触れられたのが1番の学びになった。見学当日は運良く閑谷学校の所長さんとお話ができたので、「なぜ池田光政は庶民に教育を提供しようと思ったのでしょうか?何が目的だったのでしょうか?」と聞いてみた。

閑谷学校創設者、池田光政候
閑谷学校の所長さん「池田光政には、国を創るためには人の教育が欠かせないという信念があったと思います。現代のお金に換算すれば、閑谷学校の創設プロジェクトは10億円の規模に相当します。私塾や寺子屋では提供できない体系的な教育を学校という形で実現しようとしたのですから、池田光政の教育に対する本気度合が伝わってきます。」

なるほど。たしかに、調べてみると池田光政はわずか8歳で国を治める必要性に迫られたため、儒学を必死に学んだ経験をしている。おそらく、教育が人生の明暗を分けるほどの影響力を持っていると、肌身で感じていたからこそ、「国を創るためには人の教育が欠かせない」という考えに至ったのではないだろうか。

現代教育への問い


さて、池田光政のビジョンを知っていくなかで、浮かんできた問いがある。
それは「もし、今手元に閑谷学校創設に費やされた同じ10億円があったら、現代の子どもたちにどんな教育を届けたいか?」という問いだ。

閑谷学校は読み・書き・算術と儒学に基づいた学びを子どもたちに提供した。そこで教育を受けた生徒たちはやがて明治維新の原動力となり、日本の近代化に大きく貢献している。

では、同じ10億円という資金があったら、あなたは子どもたちにどんな教育を提供したいですか?
読み・書き・算術と儒学の代わりにどんな学びが良いでしょうか?
子どもたちがその学びを得たら、日本はどう良くなりますか?
一緒に考えてみましょう!^^  

3 件のコメント:

  1. 読み、書き、算術の他に、なぜ、儒学が入っているのか興味を持った。儒学とは、1、平和統治の教え。2、現実処世の教え。3、民主的、合理的な教え。 
    国を創るリーダーの育成をしたかった池田光政の理想は、孔子だったのでは。孔子は、身分貧富の差別なく平等に教育を行った世界最古の私立学校の創始者。まさに、自分と同じ。また、儒学は、人格形成もできる。閑谷学校の所長さんが、私塾、寺子屋では、提供できない体系的な教育を学校という形で、といっていたのが、言葉として残っている。自分で学びとる力、自分で考える力をしっかり身につければ、わずか1年の教育でも、その後の明治維新の原動力、日本の近代化に大きく貢献できる人が育つ。時代が変わっても、この自分で学びとる力を身につけることは、いきていく上では、必要な教育だと思う。さいごに、445年前、実際にここで歴史上の人物が勉強していた場所にたち、あなたは、なにを感じましたか?タイムスリップできましたか?

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  2. コメントありがとうございます!Tenです。おっしゃる通りで、敷地内には孔子の廟があり、生徒たちにとって儒学の創始者は身近な存在だったようです。

    コメントを拝読して、お聞きしたいと思ったのは「どうやって自分で学び取る力や考える力が育んだのか?」です。基礎学力と礼節の2つは閑谷学校の教育で身につくとわかったのですが、自分で学ぶ力を育む教育効果があることまでは把握できませんでした。宜しければ、また教えてください^^

    ちなみに、タイムスリップはできました!敷地内で閑谷地区名産?のモチ焼きそばを食べながら、世界最古の庶民教育を提供した講堂を眺めていると、不思議と感動が沸き上がり、元気がもらえました!また、自分に10億円があったら、どんな教育を実現したいか、とても大切な問いを頂きました。

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    1. 返信ありがとうございました。
      閑谷学校の生徒たちが、たった1年しか通えないとなれば、いろいろ自分から調べたり学ばないと時間が足りないと思ったからです。いまの日本は6、3、3制プラス大学。何年も勉強しますよね。1年で国を創るためには、相当自分で考えて行動しない限り難しいと考えました。名産は、なるほど、焼きそばだったんですね。tenさんがおっしゃるとおり、445年前のタイムスリップは感動そのものだと思います。いつか機会があれば、私も行ってみたいです。こんなこと聞いてよいでしょうか?tenさんなら、10億でどんな教育をしたいですか?

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