2016年4月11日月曜日

【Grow into a talent②】 自分らしく生きさせてくれてありがとう 吳季剛/Jason Wu(台湾)


Source: Official site of Jason Wu

1983年に台湾で生まれた季剛(以下Jason)は、現在世界をリードするファッションデザイナーである。2009年、Jasonが26歳の時には、初めてファーストレディとしてデビューするミシェル・オバマのためにドレスをデザインし、大きな話題となった。



Jasonは小さい頃から変わった子だと思われていた。男の子が好むアニメや車には興味を示さず、代わりに人形遊び、京劇、ファッションショーが大好きだった。Jasonの母親も息子の好みに首をかしげたが、どうやら服に強い関心を持っていることがだんだんとわかってきた。京劇が好きなのも色鮮やかな衣装が用いられるからだ。



しかし、Jasonの趣味は両親以外の人たちには異常に映った。人形への愛情は友達からのいじめの原因となった。また、両親の友人たちが家に遊びに来た際には、至る所に飾られている人形に驚き、「娘がいないのに、どうして人形があるんだ?」と聞いてきた。自分を否定されていると感じたJasonは涙を落した。



普通ではない息子の様子を見て、Jasonの母親は子育ての方針に悩んだ。
「今やっていることを辞めさせ、模範的な男の子として育てるべきか?」
「それとも、Jasonの個性を大切にしていくべきか?」
悩んだ結果、母親は、当時の社会を支配していた常識に反して後者を選んだ。



Jasonがこれ以上来客時に恥をかかないように、自宅に地下室を作り、そこに人形たちを展示するスペースを設けた。また、Jasonには兄がいて、兄は規則正しい環境を好む一方で、Jasonは自由奔放な環境を好んだため、学校選びには二人の個性に合うところを大切にした。やがて、Jasonにデザインの才能があるとわかった時、全国から一流のデザインの先生を探し回った。



だが、Jasonに続き、母親の息子への想いも周囲から冷たい視線を浴びるようになった。
「息子が人形遊びをやっているのに、辞めさせもしないで、逆に手助けしている」
保守的な空気が満ちていた時代において、彼女を理解できる人は少なかった。Jasonの母親自身も自分の子育てについて「他の人たちと違うことをするのは大変な挑戦でした」と振り返っている。



しかし、母親のサポートの下、Jasonはデザイナーとしての才能を開花させた。中学校1年生の時には自ら人形をデザインし、ネット上で販売するビジネスを始めた。大学はニューヨークでデザインを学ぶ一方で、ファッション業界の人脈を作るために業界人が集まるバーで2年間働いた。その後、そこで知り合った人たちの協力によって、自身のファッションショーを大学4年生の時に開くことになる。これらの積み重ねがやがて大統領夫人のためにドレスをデザインするという大仕事につながっていく。



Jasonの母親はいつも息子の人生をヒヤヒヤしながら見守っていたが、今は、彼の個性を尊重しながら子育てをしたことが正しいとわかった。名声を得た後でもJasonは1日20時間働くことがある。彼はファッションデザインを愛し続けていた。ある日、Jasonが言った言葉に母親はとても感動させられたという。その一言は彼女が行ってきた子育てをシンプルに表していた。


「ありがとう、ママ、僕に自分らしく生きさせてくれて」




※これはJason Wuのこれまでの人生をまとめた実話です。
Jason Wuのオフィシャルサイトはこちら(http://www.jasonwustudio.com/)からご覧頂けます。

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