2016年4月24日日曜日

【Grow into a talent③】私は幸運にもとても若い時にダンスに恋をしました Gillian Lynne/ジリアン・リン(イギリス)


Source: Innvation for Development


1926年にロンドンの郊外で生まれたジリアン・リン(以下Lynne)はイギリスを代表するダンサーである。17歳でロイヤル・バレエ団の前身であるサドラーズ・ウェルズ・バレエ団に入団すると、『眠れる森の美女』などの大舞台で主役を射止め、スターバレリーナとしての地位を確立した。バレリーナを引退後は振付師として、全世界で絶大な人気を誇る『キャッツ』『オペラ座の怪人』『アスペクツ オブ ラブ』などの傑作をプロデュースした。



華やかなキャリアを歩み続けてきたLynneだが、幼少時代は憂鬱な日々を過ごしている。小学校での学業が振るわず、教師からは救いようがない存在として見放されていた。貧乏ゆすりがひどく、机にじっと向かうことができなかったため、遂には小学校側から学習障害のレッテルを張られてしまう。学習障害の通告を受けたLynneの両親は娘の未来をひどく心配し、専門の医者に相談することにした。



母親はLynneを連れて診断室に到着すると、学校での娘の状況を必死に説明し始めた。医師は20分ほど彼女の言葉に耳を傾けた後、Lynneの今後の人生を変えることになる実験を行った。



Lynne、私は君の状況をもっと詳しく把握するために、お母さんと別の部屋で話をしてくるから、ここで待っててくれ」



そう伝えると、医師はデスクに置いてあったラジオのスイッチを入れ、音楽が流れた状態でLynneの母親と部屋を出ていった。そして、部屋の外からLynneの様子をこっそり観察し始めた。



すこし経つと、Lynneは椅子から離れて、ラジオに近づいていった。そして、彼女はラジオのメロディーに合わせて身体を動かし始めたのだ。その様子を確認した医師は母親にこう話した。



「お母さん、娘さんは学習障害ではありません。彼女はダンサーなのです。どうか彼女をダンススクールに通わせてください」



医師のアドバイスに従って、Lynneにダンスを習わせ始めると、彼女はやっと自分の居場所を見つけられた。なぜなら、ダンススクールにはLynneのように身体を動かさないと思考ができない仲間たちがいたからだ。ダンススクールの初日の感想についてLynne自身はこう話している。



「それは言葉で表せないほど素晴らしいものでした。そこには私のような人たちがたくさんいたのです」



ダンスの才能に目覚めたLynneはダンサーとしても、振付師としてもヒット作品を次々と生み出し、巨額の富を築き上げてきた。しかし、ダンスはそれ以上の価値を彼女にもたらしてくれた。



踊ることはLynneが体験した第二次世界大戦という期間を絶望的なものからスリルな時間へと変えてくれた。爆弾が降り注ぐ日常の中でもダンスという喜びが希望を与えてくれたからだ。また、才能を開花させてくれた最愛の母親が交通事故で亡くなった際、踊ることは13歳だった彼女の心を支え続けてくれた。(Lynneは父親も戦争で亡くしている)



20134月、当時まもなく90歳を迎えるLynneは講演会の中で長寿の秘訣について語った。



「私は神に感謝しています。私は幸運にもとても若い時にダンスに恋をしました。そして、ダンスは生きることの目的と理由を与えてくれました」



※これはGillian Lynneのこれまでの人生をまとめた実話です。Lynneの講演の映像はこちら(https://www.youtube.com/watch?v=CX_O3HHYB_k)からご覧いただけます。

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